「期限付酒類小売業免許」の基礎知識

お酒の免許申請

年間を通し、全国では多くの催物(展示会)等が開催されています。

食品業界や酒類業界においても、大小さまざまな規模の展示会等が開催され、臨時会場で商品を販売したいといったケースもあるのではないでしょうか。

今回は、展示会、催物会場、お祭り等のイベントで臨時の販売場(ブース等)を設けて、お酒の小売販売を行う際に必要となる、「期限付酒類小売業免許」について解説したいと思います。

臨時販売場でのお酒の小売販売を検討している人は、参考にしてみて下さい。

目次

期限付酒類小売業免許とは

「期限付酒類小売業免許」とは、酒類製造事業者、または、酒類販売事業者が、博覧会場等で臨時に販売場を設け、酒類の小売販売を行うことができる免許です。

すでに酒類販売業免許もしくは酒類製造免許を取得している酒類取扱業者でなければなりません。

期限付酒類小売業免許には、「申請」と「届出」があり、該当する要件によって手続きに違いがあります。
なお、会場において、酒類をコップ等に注ぐなど、その場での飲用のために提供(販売)する場合は、酒税法上の酒類販売業免許は不要です。

博覧会等とは

お酒の臨時販売場を設けることができる博覧会場とはどのような場所なのでしょうか。

博覧会場等とは、「博覧会場、即売会場その他これらに類する場所」であり、酒税法の法令解釈通達では、以下のように規定されています。

博覧会場とは、会社、官公庁若しくは団体等の職場において開催される即売会場、地方物産、新製品若しくは贈答品の即売会場又は製造者の自製酒、酒類販売業者の自己の商標を付した酒類若しくは自己の輸入した酒類の広告宣伝のための展示等即売会場をいう。


また、野球場等の競技場、遊園地、キャンプ場、スキー場、海水浴場等季節的な又は臨時に人の集まる場所、ダム工事現場等又は季節的な遊覧旅行を目的とする臨時列車内若しくは遊覧船内等をいう。


法令解釈通達 第9条第2項1

具体的には、以下のような催物が該当します。

  • 酒類卸業者が主催する展示会への出店
  • 商社・輸入代理店等が行う展示会への出店
  • 地方物産展などにおける臨時販売場
  • 野球場等の競技場、遊園地などでの臨時販売場
  • キャンプ場、スキー場、海水浴場などのシーズン期間中の臨時販売場
  • 新商品、季節商品のPR販売                    など

上記以外にも、さまざまな催物が該当し、臨時販売場を設け酒類の小売販売を行うことが可能です。

酒類小売業免許による酒類の小売販売が可能かの判断に迷うときは、管轄の税務署酒類指導官や、専門の行政書士に相談するとよいでしょう。

届出による期限付酒類小売業免許の要件

酒類製造者、または、酒類販売業者が博覧会場等で臨時に販売場を設け、酒類の小売を行うにあたり、次のすべての要件に該当する場合は、臨時販売場の所在地を管轄する税務署長への届出が必要となります。

  1. 前1か月以内に同一場所で販売場を開設するための届出を行っていない。
  2. 催物等の開催期間のうち酒類の販売を行う期間が10日以内(連続した日であることを要しない)である。
  3. 催物等の開催期間または開催期日があらかじめ定められており、かつ、それが客観的に明瞭である。
  4. 酒類の小売目的は、特売または在庫処分等でない。
  5. 博覧会場等の管理者との間の契約等により、販売場の設置場所が特定されている。
  6. 販売する酒類の範囲は、免許を受けている酒類の品目と同一である。
  7. 催物等の開催場所以外の場所へ酒類を配達しない。

上記の事項に該当する場合は、販売場を開設する日の10日前までに、臨時販売場の所在地を管轄する税務署長に届出ることにより、期限付酒類小売業免許を付与したものとして扱われることとなります。

届出による期限付酒類小売業免許の販売方法

届出による期限付酒類小売業免許にて臨時販売場を設置する場合、販売場以外の場所へ酒類を配達することはできません。
販売する酒類についても、会場に持っていき、臨時販売場内にて手渡しで引き渡さなければならないことになっています。

つまり、臨時販売場において申し込みを受け、後日、配達による引渡しといった手段は取ることができません。
また、販売しようとする酒類の在庫についても同様に、臨時販売場内に持って行かなければなりません。
販売場以外の場所に商品を保管しておくことはできませんので注意しましょう。

届出に必要な書類とは

届出による期限付酒類小売業免許の手続きでは、次の書類を準備しなければなりません。

【提出書類】

  様式 内容
1 期限付酒類小売業免許届出書
(CC1-5105)
 
2 販売業免許申請書 次葉1
(CC1-5104-1(1))
販売場の敷地の状況
3 販売業免許申請書 次葉2
(CC1-5104-1(2))
建物等の配置図
4 販売業免許申請書 次葉6
(CC1-5104-1(6))
「酒類販売管理の方法」に関する取組計画書
5 酒類販売管理研修受講証  
6 酒類販売管理者標識  
7 使用(営業)の許可書 博覧会場等の管理者との契約など、
販売場の設置場所が特定できるもの
8 催物のパンフレット等 催物等の内容、開催期間、開催期日、
入場料金等が客観的に明瞭であるもの
9 酒類販売管理者選任届出書  
10 酒類販売業免許申請書(e-2)チェック表
(CC1-5104-2(6))
 

書類を作成後、販売場を開設しようとする所在地の所轄税務署へ提出します。 書類は、催物等が開催される10日前までに提出しなければなりませんので注意しましょう。

「申請」による「期限付酒類小売業免許申請」の要件

届出による期限付出小売業免許に該当しない場合は、期限付出小売業免許の申請が必要となります。
期限付酒類小売業免許の申請は、申請者、申請販売場、申請目的等が次の事項に該当していなければなりません。

  1. 申請者が製造者又は酒類販売業者であり、博覧会場、即売会場その他これらに類する場所(以下「博覧会場」)で臨時に販売場を設けて酒類の小売を行う。
  2. 酒類の小売目的は、特売又は在庫処分等でないこと
  3. 博覧会場等の管理者との間の契約等により、販売場の設置場所が特定されていること
  4. 博覧会場等に係るものについては、催物等の開催期間又は開催日があらかじめ定められていること。この場合において、ダム工事現場に係るものについては工事の終期が、臨時列車又は遊覧船に係るものについては運行期間等が明瞭に定められていること。

期限付酒類小売業免許申請の提出書類

期限付酒類小売業免許の申請は、 以下の書類を提出しなければなりません。

【提出書類】

  様式 内容
1 酒類販売業免許申請書
(CC1-5104)
 
2 販売業免許申請書 次葉1
(CC1-5104-1(1))
販売場の敷地の状況
3 販売業免許申請書 次葉2
(CC1-5104-1(2))
建物等の配置図
4 販売業免許申請書 次葉3
(CC1-5104-3)
販売設備状況書
5 販売業免許申請書 次葉6
(CC1-5104-1(6))
「酒類販売管理の方法」に関する取組計画書
6 酒類販売業免許の免許要件誓約書
(CC1-5104-8)
酒税法10条の規定に該当しない旨
7 定款(法人の場合)  
8 酒類販売管理研修受講証  
9 酒類販売管理者標識  
10 賃貸借契約書等の写し 土地、建物、設備等が賃貸借の場合
11 地方税の納税証明書  
12 催物のパンフレット等 催物等の内容、開催期間、開催期日、
入場料金等が客観的に明瞭であるもの
13 酒類販売管理者選任届出書  
14 酒類販売業免許申請書(e-2)チェック表
(CC1-5104-2(5))
 

上記書類を作成し、2週間前までに臨時販売場の所在地を管轄する税務署に提出しなければなりません。

提出後は、申請書の審査もありますので、時間に余裕を持って準備しましょう。

「届出」と「申請」の違いは?

「届出」と「申請」とに違いがある期限付酒類小売業免許ですが、どのような点が異なるのでしょうか。

以下に、「届出」の場合の要件をまとめます。「届出」に該当しない場合は、「申請」に該当します。

【届出による期限付酒類小売業免許】

要件  
前1か月以内に同じ場所で届出をしていない すべての項目が該当する場合
→「届出
開催期間が10日以内
開催期間が明瞭である
販売するお酒は免許を受けている品目と同じ
開催場所以外にお酒を配達しない

「届出」か「申請」の判断に迷う人は、管轄税務署の酒類指導官や専門の行政書士に相談するとよいでしょう。

酒類販売管理者の選任

お酒を販売する場合、販売場ごとに酒類販売管理者を選任しなければなりません。

「期限付酒類小売業免許」による催物等でのお酒の販売においても同様に、酒類販売管理者を選任しなければなりません。 酒類販売管理者は、酒類の販売業務に従事している従業員であって、かつ、研修を受講した人でなければなりません。

お酒の販売場に必要な酒類販売管理者についてはこちらで解説しています。
→ 「酒類販売管理者とは何をする人?誰がなれる?

複数の販売場において、同時に酒類の販売を行う場合、通常は、いずれの販売場においても、酒類の販売業務を行う従業員がいるはずであり、1人の酒類販売管理者が複数の販売場の酒類販売管理者を兼任することなく、販売場ごとに選任する必要があります。
しかし、本来の販売場の近隣にて出店される臨時販売場等については、一週間程度の短期間の出店の場合、酒類販売管理者を重複して選任することも可能です。

期限付酒類小売業免許の費用

期限付酒類小売業免許では、登録免許税は不要です。

博覧会等の開催後の義務

酒類販売業者には、免許取得後にも法律で規定された義務があります。

期限付酒類小売業免許では、どのような法的義務が課されるのでしょうか。 以下で、酒税法、酒類業組合法などで規定される義務についてみてみたいと思います。

販売数量報告書の提出

酒類販売業者は、購入もしくは販売をした酒類または所持する酒類の数量を、販売場の所在地を管轄する税務署長へ報告しなければなりません。
催物等の修了後には、期限付酒類小売業免許で付与された期限内に販売した酒類の数量等を報告しなければなりません。

販売数量報告書について、詳しくはこちらで解説しています。
→「【記載例あり】酒類の販売数量等報告書とは?書き方を詳しく解説

20歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準の実施状況報告書

酒類販売事業者は、酒類業組合法第86条の6第1項の規定に基づき、「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示しなければなりません。

期限付出小売業免許による酒類の臨時販売場においても同様に、酒類の陳列場所には以下の事項を表示しなければなりません。

  • 酒類の売場である
  • 酒類の陳列場所である
  • 20歳以上の年齢であることを確認できない場合には酒類を販売しない

これらの表示は、酒類の陳列場所に明瞭に表示し、使用する文字は、100ポイント以上の大きさの日本文字でなければなりません。

催物等の開催後には、「20歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」の実施状況等報告手続きを行います。 「ニ十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」の実施状況等報告書を作成のうえ、酒類販売場等の所在地を管轄する税務署の酒類指導官又は法人課税部門に持参または郵送にて提出します。

実施状況等報告を行わなかった場合、50万円以下の罰金に処せられることもあるので、販売が完了したら、しっかりと報告書を作成し提出しましょう。

まとめ

・期限付酒類小売業免許には、「届出」と「申請」がある

・期限付酒類小売業免許の申請書は、臨時販売場の所在地を管轄する税務署に提出
   届出 → 催物等の開催10日前までに提出
   申請 → 催物等の開催2週間前までに提出

・期限付酒類小売業免許は、登録免許税は不要

・期限付出小売業免許での販売においても酒類販売管理者の選任が必要

・催物等の開催後の義務
   販売数量等報告
   20歳未満の者の飲酒防止に関する表示の実施状況報告