お酒の免許 取得にはお酒の販売経験が必要?

お酒の免許 取得にはお酒の販売経験が必要? 酒税法

酒類販売業免許には、お酒の販売・製造経験や経営経験が必要な免許もあります。 お酒の免許の種類によって求められる経験年数や経験内容が異なりますので、取得したい免許にどのような経験が必要となるか事前に確認しておきましょう。

目次

お酒の免許取得にはお酒の販売経験などが必要

お酒の免許を取得するためには、基本的にお酒の販売経験や経営経験が必要になります。

お酒の免許の取得要件のうちの「経営基礎要件」のひとつとして、

経験その他から判断し、適正に酒類の小売業・卸売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者(以下略)

一般酒類小売業免許申請の手引

と定められています。

お酒の免許の審査では、これまでの経歴や職歴から、酒類販売事業を行ううえで必要な経営能力や知識があるかどうかが判断されます。

どんな経験が必要?

酒類販売業免許申請では、免許の種類によって求められる経験が異なります。

一般酒類小売業免許、洋酒卸売業免許、自己商標酒類卸売業免許店頭販売卸売業免許、協同組合員間酒類卸売業免許

一般酒類小売業免許、洋酒卸売業免許、自己商標酒類卸売業免許の取得に必要な経験として、手引では下記のように記載しています。

1 酒類の製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く。)の業務に直接従事した期間が引き続き3年以上である者、調味食品等の販売業を3年以上継続して経営している者又はこれらの業務に従事した期間が相互に通算して3年以上である者。

2 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類の製造業若しくは販売業の経営者として直接業務に従事した者等で酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者。

3これらの従事経験や経営経験がない場合には、その他の業での経営経験に加え「酒類販売管理研修」の受講の有無等から、下記①、②を実質的に審査することになります。
①酒類の特性に応じた商品管理上の知識及び経験
②酒税法上の記帳義務を含む各種義務を適正に履行する知識及び能力等、酒類の卸売業を経営するに十分な知識及び能力が備わっているかどうか


【一般酒類小売業免許申請の手引】

上記をまとめると、下記いずれかの経験が必要となります。

・お酒の販売業または製造業で3年以上働いた、または経営した経験
・味噌や醤油などの発酵食品やこれらを使用した調味食品等の販売業を3年以上経営している
・他業種での経営経験+酒類販売管理研修の受講

お酒の販売・製造経験とは、酒類販売業免許または酒類製造業免許を持つお店や酒蔵で、従業員として販売や製造の業務に直接携わっていた経験を言います。例としては、「コンビニでお酒を売っていた」「酒蔵でお酒を造っていた」などといった経歴になります。

注意したいポイント!飲食店での経験は加味されない

ここで注意したいのは、飲食店での経験は加味されないということです。飲食店は基本的に酒類販売業免許を持っていませんから、居酒屋さんなどでお酒を提供していてもお酒の販売経験とは見られない、ということに気を付けておきましょう。

お酒の販売業・製造業に直接従事した経験がない場合は、他業種での経営経験と、酒類販売管理研修を受講することで知識を補うことができることとなっています。

経営経験については、代表取締役だけでなく、取締役でもOKです。個人事業主としての開業経験があればそちらも加味されます。

経営経験については、最低でも1~3年程度はあった方がよいでしょう。

酒類販売管理研修についての詳しい解説記事はこちら
→「お酒の免許 「酒類販売管理研修」とは?

輸入酒類卸売業免許、輸出酒類卸売業免許

輸入酒類卸売業免許、輸出酒類卸売業免許については、明確な基準が示されていませんが、

・お酒の販売・製造業で働いた、または経営した経験
・他業種の経営経験+酒類販売管理研修の受講
・貿易関係の実務経験+酒類販売管理研修の受講

のいずれかの経験があるとよいでしょう。

ビール卸売業免許、全酒類卸売業免許

ビール卸売業免許・全酒類卸売業免許の場合は一般酒類小売業免許や洋酒卸売業免許よりさらにハードルが高く、手引では下記のように記載されています。

1 酒類の製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く。)の業務に直接従事した期間が引き続き 10 年(これらの事業の経営者として直接業務に従事した者にあっては5年)以上である者、調味食品等の卸売業を 10 年以上継続して経営している者又はこれらの業務に従事した期間が相互に通算して 10 年以上である者。

2 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者。

3 申請等販売場が沖縄県に所在する場合の申請者等の経歴については、1に定める期間が10年とあるのを3年と読み替えます。

酒類卸売業免許申請の手引

内容をまとめると下記いずれかの経験が必要となります。

・お酒の販売業または製造業に10年(沖縄県の販売場で申請する場合は3年)以上直接従事した経験
・お酒の販売業または製造業を5年以上経営した経験
・調味食品等の卸売業を10年 (沖縄県の販売場で申請する場合は3年) 以上経営している
・酒類業団体の役職員として相当期間勤務した経験

ビール卸売業免許や全酒類卸売業免許は、酒類業界に精通した人が取得できる免許と考えておくとよいでしょう。

その他にも経験として認められる経歴があります。詳しくは、国税庁ホームーページの酒類販売業免許の手引きに記載されていますので、気になる人はそちらを参照してください。

 一般酒類小売業免許、洋酒卸売業免許、自己商標卸売業免許、店頭販売卸売業免許、協同組合員間酒類卸売業免許
  →下記3つのうちいずれか
   ・お酒の販売業または製造業で3年以上働いた経験
   ・味噌や醤油などの調味食品等の販売業を3年以上経営している
   ・他業種での経営経験+酒類販売管理研修の受講
 輸入酒類卸売業免許、輸出酒類卸売業免許
  →下記3つのうちいずれか
   ・お酒の販売・製造業で直接従事、または経営した経験
   ・他業種での経営経験+酒類販売管理研修の受講
   ・貿易関係の実務経験+酒類販売管理研修の受講
 ビール卸売業免許・全酒類卸売業免許
  →下記3つのうちいずれか
   ・お酒の販売業または製造業に10年以上直接従事した経験
   ・お酒の販売業または製造業を5年以上経営した経験
   ・調味食品等の卸売業を10年以上経営している

経験がなくても取得できる免許とは

「お酒の販売経験や経営経験がないとお酒の販売が全くできない」というわけではありません。

通信販売酒類小売業免許については、お酒の販売・製造経験や経営経験などがない場合には、ECサイトを運営した経験やインターネット・カタログ販売の経験などで申請することができます(お酒以外の物の販売も可)。

これらの経験とあわせて酒類販売管理研修を受講することで、お酒の販売に関する知識を補ったものとみなしてもらうことができます。

経験が全くなくて困ったときは、税務署の酒類指導官や専門の行政書士に相談してみるとよいでしょう。

経験は誰に必要?

お酒の販売・製造経験や経営経験が求められるのは、法人で申請する場合は、役員のうち1人、個人で申請する場合には、申請者自身となります。

法人で申請する場合は、役員に1人、お酒の販売・製造経験または経営経験がある人がいればOKです。代表取締役以外の役員(※)でも大丈夫です。
※監査役、社外取締役、登記簿に記載されていない執行役員は除きます。

酒類販売業免許の審査では、経験内容は履歴書から判断されることになります。そのため、履歴書の職歴欄はこれらの経験を詳細に書くのが望ましいでしょう。

履歴書についての詳しい解説はこちら
→「酒類販売業免許申請に必要な『履歴書』を書く際のポイント

一般酒類小売業免許や卸売業免許が欲しいけど経験がない!そんなときは

お酒の免許は基本的にお酒の販売・製造経験や経営経験が必要となりますが、「一般酒類小売業免許や洋酒卸売業免許を取得したいのに、経験がなくて免許の申請ができない」という人もいるでしょう。

そんなときは、次の対応方法があります。

・法人で申請する場合、経験のある人を役員に迎える

・通信販売酒類小売業免許を先に取得し、1~2年程度通信販売による酒類販売事業を行った後に、一般酒類小売業免許や卸売業免許を申請する(これで経営経験や酒類販売経験を増やすことができます)

まずは自身や会社役員の職歴を振り返り、お酒の販売・製造経験や経営経験を確認してみましょう。

経験が足りているのか心配な場合は、税務署の酒類指導官や専門特化した行政書士に相談するとよいでしょう。

まとめ

・お酒の免許の取得には、お酒の販売・製造経験や経営経験が必要

・通信酒類小売業免許は酒販経験がなくても取得が可能な場合がある