「一般酒類小売業免許」の基礎知識

販売免許

酒類販売業免許といっても、免許の種類はいくつもあり、それぞれに免許の販売条件も異なります。 その中でも、比較的、取得する人が多いと思われる「一般酒類小売業免許」について解説してみたいと思います。

目次

一般酒類小売業免許とは

酒類販売を行うためには、酒税法の規定に基づき、販売場ごとに「酒類販売業免許」を受けなければなりません。
酒類販売業免許は、販売先、販売方法、販売品目により区分されています。

一般酒類小売業免許は、販売場において、一般消費者や飲食店等に対し、原則としてすべての品目の酒類を販売(小売)することができる販売業免許です。

具体的な業態としては、酒類販売店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等はもちろんのこと、リサイクルショップやテイクアウト店、業務用卸、さらには、小売業界で注目されているウーバーイーツ等が挙げられます。

一般酒類小売業免許の要件

酒税法(第10条)には、酒類卸売業免許取得のための要件(人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需給調整要件)が規定されています。 酒類販売業免許申請では、申請者がこれらの要件を満たしていることが必要となります。

酒類販売業免許申請の免許要件については、こちらでも解説しています。
→ 「必ず事前確認!お酒の免許 取得の要件とは?

さらに、申請の手引きや、酒税法法令解釈通達により、免許の種類ごとに細かい要件が規定されています。一般酒類小売業免許では、人的要件、場所的要件の他に、次の要件を満たしていることが必要となります。

免許を受けている酒類の製造業若しくは販売業の業務に引き続き3年以上直接従事した者、調味食品等の販売業を3年以上継続して経営している者又はこれらの業務に従事した期間が相互に通算して3年以上である者

【一般酒類小売業免許申請の手引】

「酒類の製造業若しくは販売業の業務に引き続き3年以上直接従事」とは、これまでに従業員として、酒類を取り扱う事業に携わった経験をいいます。

3年以上とは、3年間連続した期間である必要はなく、従事した期間の合計年数が3年以上であれば足り、販売経験については、履歴書等への記入により証明します。

また、「調味食品等の販売業を3年以上継続して経営している者」とは、調味食品等の販売店に勤務していただけではなく、経営していた経験が求められます。経営経験の期間については、合計年数が3年以上であれば足ります。

新規参入の場合は、多くの場合、これらの経験がないのでは無いかもしれません。これらの3年以上の酒販経験がない場合には、その他の事業の経営経験等に加え、「酒類販売管理研修」を受講することにより、総合勘案により要件を満たすことができます。

申請に必要な経験について、詳しくはこちらで解説しています。
→「お酒の免許 取得にはお酒の販売経験が必要?

自社が申請できるか知りたい場合は、税務署の酒類指導官や専門の行政書士に相談するとよいでしょう。

一般酒類小売業免許の販売条件

一般酒類小売業免許は、販売場において、一般消費者(飲食店を含む)に対し、原則として全ての品目の酒類を小売することができ、酒類販売業免許通知書では、「全酒類 通信販売を除く小売に限る」と記載されます。

一般酒類小売業免許は「通信販売を除く小売」と免許通知書に記載されていますが、具体的に何が出来るのでしょうか?この文言だけでは、分り辛いので、考え方を解説します。

小売のうち、通信販売小売業免許に規定される販売方法を除く小売はすべて一般酒類小売業免許が適用されると考えられます。(※ここでは特殊酒類小売免許、期限付小売免許業免許は除きます。)

つまり、通信販売小売業免許に該当しない小売は、一般酒類小売業免許が適用されるという、表裏の関係になります。そのため、通信販売小売業免許をしっかり理解することで、一般酒類小売業免許の範囲を理解することが可能です。


通信販売小売業免許は以下の3つの条件がすべて該当する場合に適用されると考えられます。

①2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象としている 
②カタログの配布やECサイト等で予め商品の内容、販売価格その他の取引条件を提示して誘因活動を行い、当該提示した条件に従って行う販売を行う
③郵便、インターネット、電話、ファクス等の通信手段で申し込みを受ける
上記3つうち、1つでも該当しなければ、一般酒類小売業免許に該当します。

通信販売小売業免許の手引きには、通信販売小売業免許の販売方法に似ていても、一般酒類小売業免許に該当する例として以下の4つを挙げています。
・店頭において酒類の売買契約の申込みを受けること(例:カタログの申込書を店頭で預かる)
・店頭において酒類を引き渡すこと(例:インターネットで注文し、決済まで済んでいるけれど、店頭で引き渡す)
・同一都道府県の消費者等のみを対象として小売を行うこと(例:通信販売しているけれど、該当エリアが、同一都道府県に限定されている)
・県を跨がる(2都道府県以上の)電話やインターネット等による受注販売であっても、一般的に自己の販売場の近隣エリア(商圏)である

これらをすべて踏まえたうえで、通信販売小売業免許に該当しないことが確実な場合、一般酒類小売業免許が該当します。

判断に迷う場合は、管轄の酒類指導官や専門の行政書士に相談しましょう。

通信販売酒類小売業免許については、こちらで解説しています。
「通信販売酒類小売業免許」の基礎知識

一般酒類小売業免許による通信販売

2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象として、インターネット等の通信販売を行いたい場合は、「通信販売酒類小売業免許」が必要となりますが、一定の条件を満たすことにより、「一般酒類小売業免許」でもインターネット等の通信販売を行うことができます。

販売場の近隣エリア(商圏)の消費者(飲食店を含む)のみを対象とする通信販売であれば、「一般酒類小売業免許」で行うことができます。

販売できる品目についても、「一般酒類小売業免許」のため、全品目を販売することが可能となります。

どこまでが近隣エリア(商圏)と言えるかどうかは、販売場の場所や周囲の状況などから税務署が判断することとなります。

フードデリバリーやウーバーイーツ等では、免許条件の範囲内で一般酒類小売業免許を活用することもできるのではないでしょうか。

詳しく知りたい場合は、税務署の酒類指導官や専門の行政書士に問い合わせてみましょう。

《一般酒類小売業免許で行う通信販売》

飲食店がお酒を小売する場合、一般酒類小売業免許が必要

飲食店が、 お酒のテイクアウトやフードデリバリー、ウーバーイーツ等 でお酒を小売したい場合、一般酒類小売業免許が必要です。飲食店と同一場所では、原則は免許が下りない扱いになっていますが、飲食店の販売場の区画、飲食店用と小売用のお酒を仕入れから販売まで明確に分けて管理できること等を条件に免許を取得可能です。

飲食店と同一場所で酒類販売業免許を取得する方法 については、こちらで解説しています。
→ 「飲食店と同一場所で酒類販売業免許を取得する方法

登録免許税の納付

酒類販売業免許の取得では、免許通知書の交付の際に登録免許税の納付が必要となります。
一般酒類小売業免許の取得では、免許1件につき30,000円の登録免許税となります。

酒類販売業免許申請の登録免許税については、こちらでも解説しています。
→ 「お酒の免許 取得の費用はどのくらい?

酒類販売管理者の選任義務

酒類小売業者には、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(酒類業組合法)にて、販売場ごとに「酒類販売管理者」を選任しなければならないと規定されています。

酒類販売管理者は、酒類の販売業務に従事する従業員に対し、酒類販売業務に関する法令(酒税法、酒類業組合法、未成年者飲酒禁止法など)の規定を遵守するよう、必要な助言、指導を行います。

酒類販売管理者を選任しなかった場合、罰金に処されることもありますので注意しましょう。

酒類販売管理研修については、こちらで解説しています。
→ 「お酒の免許 「酒類販売管理研修」とは?

まとめ

・「一般酒類小売業免許」は、販売場において、消費者(飲食店を含む)に対し、原則としてすべての品目の酒類を販売(小売)することができる酒類小売業免許である。

・一般酒類小売業免許の取得には、次のいずれかの経験が必要

   1.酒類販売業の業務に引き続き3年以上直接従事した経験

   2.調味食品等の販売業を経営した経験が3年以上

   3.1、2の経験がない場合は、その他事業での経営経験と酒類販売管理研修の受講が必要

・一般酒類小売業免許でも、近隣エリア(商圏)であれば通信販売を行うことができる。

・免許取得時に納付する登録免許税は、30,000円。

・販売場ごとに、酒類販売管理者を選任しなければならない。