【記載例あり】酒類の販売数量等報告書とは?書き方を詳しく解説

免許取得後の義務

酒類販売業免許を取得すると、毎年3月頃に税務署から「酒類の販売数量等報告書」が送られてきます。酒類販売業者は、毎年4月30日までに報告書を作成し税務署に提出する必要があります(「申告義務」)。 「報告書」と聞くと大変そうに感じるかもしれませんが、1枚で済む書類なので、ここで内容を理解しておいて提出の際に落ち着いて対応できるとよいですね。

目次

販売数量の報告は酒類販売業者の義務のひとつ

酒類販売業者になると、記帳義務や申告義務、標識の掲示義務など、さまざまな義務が課されます。

酒類販売業者の義務について 詳しくはこちら
→「酒類販売業免許取得後の義務とは?押さえておきたいポイント3つ

その中で毎年対応が必要となるのが、申告義務のうちの「酒類の販売数量等報告書」の提出です。

毎年4月30日までに、前年度(4月1日~3月31日)のお酒の販売数量や在庫数量を、販売場を所轄する税務署に申告することになっています。

販売数量が0であっても報告書の提出は必要になりますので注意しましょう。

「毎年報告書を出すのを覚えておく自信がない」という人もいるかもしれませんが、毎年3月頃には税務署から報告書類が届きます。自分で覚えておく必要はありませんので安心して税務署から書類が届くのを待ちましょう。

報告書を提出しないと懲役や罰金に処されることも

酒類の販売数量報告書を提出しなかった場合、申告義務違反になり1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることがあります(酒税法第58条)。

また、罰金に処されると、酒類販売免許の取消要件に該当し免許を取り消される可能性も出てきてしまいます。

毎年の提出を面倒に感じるかもしれませんが、法令上の義務ですので必ず遵守しましょう。

e-Taxでも提出可

「酒類の販売数量等報告書」は、e-Taxソフトで作成し提出することもできます。e-Taxで提出する場合でも、提出期限や記載方法は書面と同じです。

販売場毎に提出が必要

「酒類の販売数量等報告書」は、酒類販売免許を受けた販売場毎に作成・提出が必要です。複数店舗で酒類販売免許を取得している場合は、各店舗で提出が必要ですので注意しましょう。

「酒類の販売数量等報告書」の記載方法

「酒類の販売数量等報告書」に記載するのは次の項目です。

・報告者の住所、会社名・代表者氏名(個人の場合は氏名)、電話番号
・法人番号(法人のみ)
・販売場の所在地及び名称、電話番号
・対卸売業者への卸売数量(ℓ)
・対小売業者への卸売数量(ℓ)
・小売販売数量(ℓ)
・3月末在庫数量(ℓ)

具体的な記載方法

はじめに

自己の販売場がどの酒類販売業免許を持っているか確認しましょう。卸売業免許または小売業免許によって、記載が必要な場所が異なります。
・4月1日~3月31日分の合計数量を記載します。
・単位はリットル(ℓ)です。1リットル未満の端数は四捨五入します。
・輸出した数量は含めずに記載します。
・返品された分は差し引いて記載します。
・マス目より桁数が増える場合は、マス目を無視して記載して大丈夫です。

卸売販売数量

卸売業免許を持っていたら記載が必要です。

国内の酒類販売業者に卸売りをした数量を記載します。販売相手が卸売業者か小売業者かで区別して記載します。もし販売相手が卸売業免許と小売業免許の両方を持っている場合は、卸売販売だったのか小売販売だったのかを確認するとよいでしょう。
なお、飲食店への販売は小売となりますので、この欄には記載しません。

※輸出酒類卸売業免許のみを持っていて、1年間に販売したお酒が全て海外への輸出販売だった場合、販売数量欄は記載不要です。別途、「酒類業実態調査のお願い」という調査依頼が来た場合は、そちらを提出するようにしましょう。

小売販売数量

小売業免許を持っていたら記載が必要です。

国内の一般消費者や飲食店に販売した数量を記載します。店頭販売やインターネット販売など、小売で販売したすべての販売方法の合計を計算しましょう。越境EC等で海外へ販売した数量は含めません。

試飲や欠減などで消費した分は?

お酒を店頭で試飲として提供したり、棚卸しの際に欠減が発生することもあるでしょう。試飲や欠減などで消費してしまった分は、販売数量には含めません。あくまでも販売したお酒の数量のみを記載します。
なお、試飲や欠減分は販売数量等報告書には記載しませんが、酒類受払帳への記載は必要です。

酒類受払帳について 詳しくはこちら
→「【記帳例あり】お酒の帳簿には何を記帳する?記帳のポイントやコツを解説

3月末在庫数量

全ての酒類販売業者は記載が必要です。

3月31日時点の在庫数量を記載します。在庫数量には、輸出用の酒類も含めて記載します。
なお、蔵置所を設置している場合は、蔵置所に保管しているお酒の在庫も含めて記載します。

蔵置所について 詳しくはこちら
お店以外の場所にお酒を保管するなら「蔵置所」の届出が必要

摘要①

全ての酒類販売業者が記載が必要です。

販売場の業態であてはまるものにチェックします。報告書作成時点の業態です。
例えば、ワイン専門店なら①、インターネット販売のみなら©にチェックしましょう。酒類製造業者、卸売業者は©にチェックします。

摘要②

該当する酒類販売業者のみ記載が必要です。

1年間に販売したお酒が全て海外への輸出販売だった場合、この欄にチェックします。国内で販売実績がある場合は空欄のままにしておきましょう。

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販売実績がなかったときはどうやって記載する?

1年間の販売実績がない場合でも、酒類の販売数量報告書の提出は必要です(酒税法第14条)。販売数量や在庫数量が0のときは、「0」と記載して提出しましょう。

酒類販売業免許は2年間休業していると免許の取消要件に該当します。2年続けて販売数量0で報告すると、税務署から連絡が来ることがあります。

ただし、免許を維持したいからといって、虚偽の報告をすると懲役又は罰金に処せられることがあり、これらの刑に処せられた場合も免許の取消要件となります。

虚偽の報告は決してしないようにしましょう。

2年続けて販売実績がなかった場合は、酒類販売業免許が取り消される可能性があるということを頭の片隅に入れておくとよいでしょう。

まとめ

・酒類販売業者は、毎年4月に「酒類の販売数量等報告書」を作成し税務署に提出する必要がある

・「酒類の販売数量等報告書」は免許を受けた販売場毎に提出が必要

・「酒類の販売数量等報告書」には1年間のお酒の品目別・販売先別の販売数量や3月31日時点の在庫数量などを記載する

・1年間の販売実績がなくても「酒類の販売数量等報告書」の提出が必要