酒販免許の申請は個人or法人どちらがいい?

酒販免許の申請は個人or法人どちらがいい? 注目のトピックス

酒類販売業免許を取得してこれから事業を始めようとしている人は、個人と法人、どちらの名義で取得した方がよいのか悩む人もいるのではないでしょうか。

結論から言うと、酒類販売業免許は個人事業主または法人のどちらでも取得でき、費用や審査期間に違いはありません。「事業を行う主体」で免許を取得するようにしましょう。

目次

酒類販売業免許は個人でも法人でも取得できる

酒類販売業免許は、個人事業主として取得することもできますし、法人として取得することもできます。新設法人でも酒類販売業免許の取得が可能です。

個人・法人のどちらで取得しても、免許内容や費用、取得までにかかる期間に違いはありません。
どちらで取得した方が有利ということはなく、いずれの場合も
・登録免許税:小売業免許なら3万円、卸売業免許なら9万円
・税務署での審査期間:約2か月
ということは同じです。

行政書士に免許取得代行を依頼する際の代行手数料も、個人と法人で同じ料金設定になっているところが多いです。

免許費用についてはこちら→「お酒の免許 取得の費用はどのくらい?
免許取得までの期間についてはこちら→「お酒の免許 取得の期間はどのくらい?
行政書士にお酒の免許取得代行を依頼する場合の費用については、こちらで解説しています。
→「酒販免許は自分で申請or行政書士に依頼どちらがいい?

それでは、個人での申請と法人での申請では何が違ってくるのでしょうか。

個人申請と法人申請の違いは審査対象

個人での申請と法人での申請では、免許要件が異なります。酒類販売業免許の4つの要件のうち、人的要件と経営基礎要件については、個人申請の場合は申請者本人、法人申請の場合は法人自身と役員が審査対象となっています。

酒類販売業免許の4つの要件について、詳しくはこちらで解説しています。
→「必ず事前確認!お酒の免許 取得の要件とは?

人的要件

過去2年間に税金の滞納処分を受けたことがないことや、酒類販売業・製造業免許の取消処分を受けたことがない(ある場合は取消処分を受けた日から3年以上経過している)などの要件があります。

個人申請の場合は申請者本人が、法人申請の場合は法人自身と役員全員がこれらの要件をすべて満たしている必要があります。

例えば、「法人としては問題ないけれど、役員の中に住民税(地方税)の滞納処分を去年受けた人がいる」という場合には、人的要件を満たすことができません。

経営基礎要件

法人申請の場合のみ、直近3事業年度分の財務諸表(決算報告書)の内容が審査されます。

お酒の免許 最初に確認しておきたい『決算報告書』の内容とは?

また、免許の種類によっては、酒類販売業に従事した経験などが必要になりますが、この経験についても、個人申請の場合は申請者自身に求められ、法人申請の場合は常勤の役員のうちいずれか1人以上の酒類取扱業経験者がいることが望ましいでしょう。

お酒の免許 取得にはお酒の販売経験が必要?

個人申請/法人申請のときに必要な添付書類

申請書と合わせて提出する添付書類も、個人申請と法人申請で異なってきます。

法人での申請の場合のみ必要な書類定款
個人での申請の場合のみ必要な書類最近3年分の個人の所得が分かる書類(確定申告書、源泉徴収票)

個人での申請の場合、確定申告をした人は確定申告書、給与所得がある方は源泉徴収票、どちらも該当する人は確定申告書と源泉徴収票の両方を提出します。

また、添付書類のうち履歴書については、法人申請の場合、役員全員の履歴書を提出します。
※役員とは、登記事項証明書(法人登記簿)に記載されている役員で、社外取締役、監査役を含みます。

お酒の免許の添付書類 『定款』は変更登記が必要な場合も

法人成り・個人成りの手続きとは?

「今は個人事業主だけど、経営が軌道に乗ったら会社を設立したい」という人も多いでしょう。その場合は、法人成りの手続きが必要になります。

酒類販売業免許は個人から法人に引き継ぐことができます。法人成りの場合、個人の免許の取消申請をして新たに法人で免許を取得することになるため、実質は新規の取得と同じ手続きが必要になりますが、免許条件は同じ内容のまま引き継ぐことができます

また、法人で取得した免許を役員の一人に免許を引き継ぎたいという場合も、法人として取得した免許を取り消し、個人事業主として新たに免許を取得することになります。

法人成り・個人成りの場合は、酒類販売業免許の取消申請と新規申請を同時に行うことになります。申請書を提出する際には、事前に税務署に次の2つを伝えておきましょう。

・新しい免許での開始希望日
・これまでの免許の取消希望日(新免許開始希望日の前日にする)

こうすることで、法人成り・個人成りの場合でも、途切れることなく酒類販売業を続けることができます。

結論:「事業を行う主体」で免許を取得しておいた方がよい

酒類販売業免許は、個人でも法人でも免許内容や費用、取得難易度に違いはなく、どちらで申請しても同じです。

ただし、酒類販売事業は、酒類販売業免許を取得している人格(名義)で行わなければならないということに注意しましょう。

例えば酒類販売業免許を個人で取得した人が、経営する法人で仕入れたお酒を販売する、といったことはできません。法人が仕入れ・販売を行う場合は法人として免許を取得し、法人で仕入れを行い、個人が販売する場合には、それぞれ別の人格で行う事業になるため、法人・個人それぞれが免許を取得する必要があります。

お酒の販売業を法人の事業として行うのであれば法人で、個人事業として行うのであれば個人で取得します。 お酒の免許を個人と法人どちらで取得するのかは、免許の取りやすさではなく、「だれがお酒の販売業を行うのか」によって判断しましょう。

これから開業を考えている人は…

これから開業し、酒類販売事業を開始する場合、酒類販売業免許の取得難易度は個人事業主と法人で大きな違いはありませんので、一般的なメリット・デメリットを考慮して個人事業主として開業するか、法人設立するか決めるとよいでしょう。

  個人事業主 法人
メリット ・開業手続きが簡単
・ランニングコストが安く抑えられる
・社会的信用が大きい
デメリット ・社会的信用が法人に比べて劣る ・設立費用がかかる
・ランニングコストがかかる