「輸入酒類卸売業免許」の基礎知識

酒税法

近年、グローバル化が進み、海外の商品も比較的容易に入手することができるようになりました。

お酒のビジネスにおいても、各酒販店では多くの海外酒が取り扱われ、大手商社だけでなく、中小さまざまな企業が輸入元となってきています。

今回は、お酒を輸入する際に必要となる「輸入酒類卸売業免許」について解説したいと思います。

目次

酒類卸売業免許とは

酒類の販売を行う際には、酒税法の規定に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地を管轄する税務署長より、酒類販売業免許を受ける必要があります。

酒類販売業免許は、販売先、販売方法、販売品目によって区分され、このうち、酒類販売事業者や酒類製造業者に対して、酒類の販売を行うことができる免許が「酒類卸売業免許」です。

酒類卸売業免許では、一般消費者(飲食店)への小売販売は行うことができませんので注意しましょう。

輸入酒類卸売業免許とは

酒類卸売業免許は8つに区分され、このうち、自己が直接、海外の酒類を輸入し、日本国内の酒類販売事業者へ卸売することができる免許が、「輸入酒類卸売業免許」です。

輸入事業のみではなく、海外へお酒を輸出したい場合には、「輸出酒類卸売業免許」が必要となります。

お酒を輸出する際に必要な輸出酒類卸売業免許についてはこちらで解説しています。
→「輸出酒類卸売業免許の基礎知識

免許要件

酒類販売業免許の申請では、酒税法第10条に規定される要件を満たしていなければなりません。
酒類販売業免許は、酒類販売業免許申請のための要件が酒税法第10条に規定され、大きく4つに区分されています。

酒類販売業免許申請の免許要件については、こちらでも解説しています。
→ 「必ず事前確認!お酒の免許 取得の要件とは?

個人で申請の場合は申請者、法人で申請の場合は、役員等の全員が要件を満たしてなければなりませんので、事前にしっかりと確認しましょう。

また、輸入酒類卸売業免許の申請では、年間免許件数の規定や、取引先との取引数量の規定等はありませんが、海外の仕入先、国内販売先の酒類販売事業者が、少なくとも1社ずつ決まっていることが条件となります。

申請の時点で取引先が決まっていない場合は、取引先の選定から準備を始めましょう。

輸入酒類卸売業免許の販売方法及び販売品目

酒類販売業免許は、免許の種類ごとに販売条件が付与され、免許条件の範囲内で酒類の販売を行うことができます。

輸入酒類卸売業免許では、「自己が輸入する酒類の卸売ができる」といった免許条件が付与されますが、どのような販売方法や、どのような種類のお酒を販売することができるのでしょうか。

以下で、具体的にみてみたいと思います。

輸入酒類卸売業免許の販売方法

輸入酒類卸売業免許は、前述したとおり、「自己が、直接輸入した酒類を卸売」することができる免許です。

そのため、自己(自社)の名義で海外の取引先(酒造、商社など)から、酒類の輸入を行わなければなりません。

日本国内において、他者(社)が輸入した酒類を買い受け、酒類販売事業者へ卸売(販売)するような場合は、国内卸売(販売)に該当するため、「輸入酒類卸売業免許」ではなく、「洋酒卸売業免許」が必要となりますので注意しましょう。

また、卸売先(販売先)については、日本国内の酒類取扱事業者への卸売のみ行うことができます。

輸入したお酒を、一般消費者等に対し通信販売したい場合は、「通信販売酒類小売業免許」が必要となります。

通信販売によるお酒の小売販売を行うときに必要な酒類小売業免許についてはこちらで解説しています。
→ 「通信販売酒類小売業免許の基礎知識

販売できる酒類の品目

輸入酒類卸売業免許は、「自己が輸入する果実酒の卸売に限る」等といった、販売条件が付与されることがあります。

では、どのような場合に、販売条件が限定されてしまうのでしょうか。

酒類卸売業免許の申請の際には、取引先が具体的に決まっていることを証明するため、「取引承諾書」という書類の提出が必要となります。

この「取引承諾書」を果実酒のみを製造しているワイナリーから取得した場合には、「果実酒」の卸売に限定されてしまう可能性があります。

このように、取引(仕入)が確実な品目や、取り扱う予定がある酒類の品目に限定されてしまうことがあるので注意が必要です。

扱える品目を制限されたくない場合は、取引承諾書を取得する際の取引先が、数種類の品目を販売できることが望ましいと考えられます。

たとえば、数種類の品目のお酒を扱っているような海外商社からの取引承諾書を取得する場合などです。

または、異なる取引先から取引承諾書を取得し、数種類の品目を仕入れられるようにすることで、品目制限のない免許を取得できるでしょう。

酒類販売業免許申請の取引承諾書については、こちらでも解説しています。
→ 「お酒の免許申請に必要な取引承諾書とは?

酒税法上の品目については、こちらで詳しく解説しています。
→「お酒の免許申請における「酒類の品目」ってなに?

申請の際の、「取引承諾書」の取得については、仕入できる品目に着目し選定するとよいでしょう。

輸入する酒類の表示義務について

酒類を輸入する者(輸入者)は、保税地域から引き取る時までに、輸入する酒類の容器等の見やすい箇所に、以下の事項(酒類表示義務事項)を表示しなければなりません(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律 第86条の5)。

  • 輸入者の氏名または名称、住所
  • 引取先の住所
  • 内容量
  • 酒類の品目
  • 酒類の品目に応じ法令で定められている事項

【ラベルサンプル】

表示については届出が必要となり、輸入する酒類が蔵置されている保税地域を管轄する税関にて行うこととなります。

ラベル等には、輸入者の氏名または名称、輸入者の住所、引取先の所在地(酒類販売場の住所)を表示しなければなりません。

自宅を酒類販売場として使用する場合には、自宅住所がラベル等に表示されることとなりますので、酒類販売業免許申請の際には、酒類販売場の住所についてもしっかりと検討しましょう。

詳しく知りたい人は、税関のHPを参考にしてみて下さい。
東京税関:https://www.customs.go.jp/tokyo/sodan/sakerui_hyoujihouhou.htm

登録免許税

酒類販売業免許の取得では、免許通知書の交付の際に登録免許税の納付が必要となります。
輸入酒類卸売業免許の取得では、免許1件につき90,000円の登録免許税となります。

酒類販売業免許申請の登録免許税については、こちらでも解説しています。
→ 「お酒の免許 取得の費用はどのくらい?

まとめ

・酒類卸売業免許は、一般消費者(飲食店含)への小売販売はできない。

・輸入酒類卸売業免許は、自己名義で酒類を輸入しなければならない。

・輸入酒類卸売業免許は、扱える品目を制限されたくない場合は、取引先が数種類の品目を販売できることが望ましい。

・酒類の輸入事業者には、酒類の表示義務がある。

・卸売業免許の登録免許税は、90,000円