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居住用の建物で酒類販売業免許を申請するポイント

酒類販売業免許の申請では、販売場(酒類販売業務を行う店舗や事務所)が必要になります。これから酒類販売業免許の取得を考えている人の中には、自宅の一部や居住用マンションを事務所として仕事をしているなど、居住用の建物を販売場として申請したいという人も多いのではないでしょうか。

酒類販売業免許では、居住用の建物を販売場として申請することも可能ですが、賃貸借契約の内容や分譲マンションの場合など注意したいポイントもあります。ここでは、居住用の建物で申請する際の要件や戸建て・アパート・マンションで申請する際のポイントなどを解説しています。

酒類販売業免許の申請には「販売場」が必要

お酒の免許申請では、大きく4つの要件を満たす必要があり、そのうちのひとつが場所的要件になります。国税庁の手引では、下記のように記載されています。

2 酒税法 10 条9号関係の要件(場所的要件)
  正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとしていないこと

【国税庁 一般酒類小売業免許申請の手引】P.7


簡単に言うと、「事業用(酒類販売場)として使っても問題がない場所であること」ということです。

居住用建物で申請する場合は、場所的要件をクリアできるかどうかをはじめに確認しましょう。具体的には、下記の2つを満たす必要があります。

①すでに酒類販売業免許を受けている場所ではないこと
②他の営業主体の営業とは明確に区分できること

①すでに酒類販売業免許を受けている場所ではないこと

お酒の免許は、申請者場所に対して付与されます。免許通知書には「この地番のこの区画に〇〇免許を付与します」といった記載がされます。同じ地番の同じ区画で、すでに他の会社が酒類販売業免許を持っている場合は、その区画で申請することはできません。例えば、申請したい物件が自宅で、同居している家族が酒類販売業免許をその自宅ですでに持っているときは、その場所では申請できません。

②他の営業主体の営業とは明確に区分できること

「他の営業主体から独立した営業」であるかどうかは、販売場の区画割りや専属の従業員がいるか、代金決済に独立性があるかなどから判断されます。例えば、同じ場所にある別の会社のデスクやパソコンを共有していると、他の営業主体と明確に区分できないため、その場所では申請することができないことになります。

お酒の免許を申請したい物件で、すでに別の会社が事務所として使っている場合、その会社の事務所とは占有スペースを分け、従業員も代金決済も独立している必要があります。

居住用建物で申請する場合の条件2つ

居住用建物で申請する場合、下記を満たすことが条件となります。

  • 販売場として占有使用できる区画があること
  • 建物所有者が「酒類の販売場として使用すること」を承諾していること

酒類の販売場として使用できる区画があること

酒類販売業免許の免許が交付されると、免許通知書の2ページ目に図面が添付され、赤枠で免許交付部分の区画が図示されます。そのため、申請時は平面図などでどの区画を販売場とするか明確にしておく必要があります。

販売場として占有使用できる区画が必要になるため、生活スペースと同じ場所で申請することができません。居住用建物で申請する場合は、自分の生活スペースと販売場を明確に分けておく必要があります。建物全体を販売場にしてしまうと生活スペースがなくなってしまうため、生活スペースとして使わない部分を販売場とするとよいでしょう。

また、販売場は他とは独立した区画である必要があるため、リビングの一画で申請など、生活スペースとの区画が明確でない場所では申請が難しいです。最低一部屋は用意できた方がよいでしょう。

販売場の広さについては「〇㎡以上の面積」といった決まりはありませんが、実際にその場所でお酒の販売事業を行うため、デスクや椅子、お酒を保管する場合は保管場所を確保できる程度の広さが必要になります。

建物所有者が「酒類の販売場として使用すること」を承諾していること

酒類販売業免許では、酒類の販売場に使用してよい場所かどうかが確認され、建物所有者=オーナーが「酒類の販売場として使用すること」を承諾している必要があります。申請では、賃貸借契約書と、必要に応じて使用承諾書を提出します。

物件の状況によって確認したい内容や必要書類が異なりますので、具体的に見ていきましょう。

申請したい建物が戸建ての場合

「自分で自宅を購入した」「両親が所有する物件に住んでいる」という人もいるでしょう。戸建ての自宅で申請する場合は、比較的申請しやすいと言えます。

申請者自身が購入した戸建ての自宅

建物所有者は申請者自身になりますので、特に書類等の提出は不要です。

配偶者が購入した、または配偶者と共同で購入した戸建ての自宅

配偶者に「使用承諾書」を書いてもらいます(申請者自身と配偶者で共同で購入した場合も同様です)。

両親や親族が所有している戸建ての自宅

両親や親族が所有している物件を借りている場合は「賃貸」ということになりますが、実際には賃貸借契約を結んでいないことも多いでしょう。その場合は、「使用承諾書」を建物所有者である両親や親族に書いてもらえば良いでしょう。

建物所有者が複数いる場合は、すべての建物所有者から使用承諾書を取得する必要があります。

申請したい物件が賃貸アパートの場合

賃貸アパートの一室で申請する場合は、最初に賃貸借契約書を確認しましょう。

使用目的や使用用途が「居住」に限定されている場合は、大家さんの承諾を得る必要があります。大家さんに事前に「お酒の販売事業を行いたいのですがよいでしょうか」と確認を取ったうえで、良いということであれば使用承諾書に捺印してもらいましょう。なお、大家さんに会えない場合は不動産管理会社に問い合わせるとよいでしょう。

申請したい建物がマンションの場合

賃貸マンションの一室で申請する場合は、注意したい点があります。

まずはそのマンションがワンオーナーのマンション(大家さんがそのマンション全体を所有している)なのか、分譲マンションの賃貸(マンションの区分所有者からその部屋を借りている)なのかを確認しましょう。

ワンオーナーのマンション(賃貸)の場合

賃貸アパートと同じく、下記の流れで進めていきましょう。

①賃貸借契約書の「使用目的」「使用用途」を確認

②「居住」に限定されていたら、大家さんに「貸室で事務所として使っても良いか」を確認

③大家さんから承諾を取れたら、使用承諾書を依頼

分譲マンション(賃貸)の場合

分譲マンションの区分所有者から借りている場合は最もハードルが高いと言えるでしょう。実際にかなりのケースで承諾が得られていないという現実があります。

賃貸借契約書上では事務所の使用が認められている(部屋を貸してくれた人は事務所として使ってもいいと言っている)場合でも、マンション管理規約で制限されている場合がほとんどです。実際には事務所が複数入っていても、マンション管理規約で「居住専用」となっている場合は、マンション理事会やマンション管理組合から書面による「事務所使用について承諾」が必要になります。

通常、マンション理事会に承諾を依頼するのは、申請者本人ではなく、貸主である所有者になると思いますので、借主の酒類販売免許取得のために所有者がマンション理事会にまで掛け合ってくれるか、さらにマンション理事会がそれを承諾をしてくれるか、という2つの大きいハードルをクリアする必要があります。

分譲マンション(自己所有)の場合

分譲マンションでの申請は、自己所有であっても賃貸同様ハードルが高いと思ってよいでしょう。

「購入したのだから自由に部屋を使っていいはず」と思う人もいるかもしれませんが、実際には分譲マンションはマンション管理規約で「居住専用」と定められており、事務所として利用できないことがほとんどです。

「会社の登記はできたのに、なぜお酒の免許の申請では使えないの?」と疑問を感じた人もいるでしょう。会社の本店所在地として登記をする際には、不動産の使用用途まで審査されることが無いからです。しかし、お酒の免許申請では「実際にお酒の販売事業を行う場所」として申請し、「事業用として使っても良いかかどうか」が審査されることになります。

ほとんどのマンション管理規約で事務所使用が認められていないのは、事業用として使用されると来客など居住者以外の部外者が多く出入りすることが想定され、セキュリティや騒音などで他の居住者の迷惑になるかもしれないからです。

マンション管理規約で事務所利用が禁止されていても、例外として、マンション理事会やマンション管理組合から事業用としての使用が認められ、使用承諾書などの書類を提出できるのであれば申請は可能です。理事長と仲が良かったり、ご自身が理事の場合は、承諾を得られる可能性は高くなると思います。

先ずは、事業用として使用することについて承諾してもらえるかマンション理事会に確認しましょう。事業用として使用することについて承諾を得ることが難しいようであれば、別の場所で申請することを検討しましょう。

まとめ

  • 酒類販売業免許は販売場が必要で、場所的要件を満たせば居住用建物でも申請可能
  • 居住用の建物の場合は、事業用として使用することが問題ないか審査される
  • 自宅で申請する場合は、販売場として使用できる専用区画が必要。生活スペースと販売場を明確に分ける必要がある
  • 賃貸アパートや賃貸のワンオーナーマンションは建物所有者から事業用として使用することについて承諾が得られれば申請可能
  • 分譲マンションは、所有者が事業用として使って良いと言っていても、マンション管理規約で「居住専用」となっていれば、マンション管理組合またはマンション理事会からも事業用として使用することについて承諾が必要