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酒類販売業務を外注(業務委託)できる?酒税法上の考え方と、実務で注意すべきポイント徹底解説

酒類販売を行うにあたり、店舗運営やEC業務を外部に委託したいと考える事業者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
人員配置や業務効率の観点から、「販売スタッフや店舗運営業務だけを業務委託できないか」と検討するケースもあるかと思います。
ただし、お酒の販売については、他の商品と同じ感覚で業務委託のスキームを組んでしまうと、酒税法上、思わぬ問題が生じやすい分野でもあります。

この記事では、酒類販売業務を外注(業務委託)したいと考えた際に、どこまで外注できるのか、どのようなスキームであれば問題になりにくいのかについて解説します。
あわせて、免許申請の段階で判断に迷いやすいポイントを整理し、後からスキームを修正するリスクを避けるための考え方を確認していきます。

酒類販売業務を外注(業務委託)できる?

結論から言うと、酒類販売業務を外注(業務委託)すること自体は可能です。
ただし、酒税法に適したスキームであることが前提となります。

酒類販売業免許は、あくまで「免許を受けた者が自ら酒類を販売すること」を前提としています。
そのため、契約書の名称や形式よりも、日々の運用として、誰が仕入れ、誰が在庫を持ち、誰が顧客に対して販売者として責任を負っているのか、といった実態が判断の基準となります。

この点を誤解したまま業務委託契約を進めてしまうと、免許申請の段階で問題になることがあります。実務上は、委託側が酒類販売業免許を申請しようとして失敗するケースが多くみられます。

誤った業務委託スキームによる失敗事例

実務上よく見られるのが、次のようなスキームです。

  • 販売業務を行わない委託側が酒類販売業免許を取得する
  • 店舗運営業務のみを受託側に業務委託する
  • 酒類の仕入れ及び売上を委託側で計上する
  • 販売スタッフを外注(業務委託)という形で配置する
  • 委託側が受託側に業務委託費(販売手数料等)を支払う

一見すると、「販売の主体は委託側だから問題ないのでは」と感じられるかもしれません。
しかしこのスキームは、実態として代理販売と判断される可能性が高く、酒類販売代理業の無免許営業に該当するおそれがあります。

その結果、「酒類販売業免許の許可が下りない」「オープン予定日に間に合わない」「業務委託契約の内容を見直す必要が生じる」といった事態になるケースも少なくありません。

正しい業務委託スキームの考え方

酒税法に適したスキームは、次のような考え方です。

  • 販売業務を行う受託側が酒類販売業免許を取得する
  • 酒類の仕入れ・売上は、すべて受託側で計上する
  • 受託側で発生した利益を前提に精算を行う

ここで重要なポイントは、受託側で売上が発生していることを前提に精算が行われる形を取ることです。
例えば、委託側が家賃や設備の購入費などを負担している場合、受託側の売上からそれらの経費を精算することになります。また、受託側から委託側に売上の〇%を支払うといった販売手数料を支払うことが考えられます。

一般的な業務委託の売上の立ち方や精算方法とは逆で、賃貸借契約に近いスキームのほうが、酒類販売の業務委託においては酒税法に適合しやすいと思われます。

なぜこのスキームが求められるのか

酒類販売業免許は、免許を受けた者が自ら酒類を販売することを前提とした制度です。そのため、「免許を持つ事業者が酒類の仕入れと売上を計上していること」、「販売に従事するスタッフも、原則としてその免許事業者側の人員であること」が重要なポイントになります。

業務委託という形式を取っていても、実態として販売主体となる事業者が、酒税法上の免許取得を求められることになります。

すでに誤ったスキームで契約してしまった場合

すでに前述のような誤ったスキームで業務委託契約を締結している場合には、契約内容を正しいスキームに修正する必要があります。特に、「オープン日がすでに決まっている」、「内装工事や人員確保が進んでいる」といった状況では、スキーム修正に時間がかかることもあるため、早めの見直しが重要です。

業務委託契約を締結する際の注意点

契約書のタイトルは、「業務委託契約書」であっても問題ありません。タイトルそのものは、実務上あまり重要視されません。それよりも重要なのは、以下のような実態面です。

  • 誰が酒類の仕入れと売上を計上するのか
  • スタッフはどちらの事業者に所属するのか
  • お金の流れはどうなっているのか
  • 酒類の発注や商品の流れはどうなっているのか

これらの点が、税務署で審査されます。契約書のタイトルよりも、実際の運用内容が重視される点には注意が必要です。

また、EC販売を行う場合には、特定商取引法に基づく表記や受注確認メールなど、第三者から見て販売主体が誰であるかが分かる外形的な表示についても、免許名義と一致する必要があります。実際には受託者が販売している場合は、これらの表示は受託者の名義で表示を行わなければならなりません。

その他に注意すべき点(販売場・物件)

酒類販売業免許の審査では、申請者が販売場を適法に使用できる権限を有しているかも確認されます。
そのため、販売主体となる事業者と、店舗や事務所の賃貸借契約名義が一致していることが望ましいとされています。

賃貸借契約の名義が受託側であれば問題ありませんが、委託側名義で借りている物件を、受託側の販売場として使用する場合には、以下の点について整理が必要になります。

  • 賃貸借契約上、転貸(又貸し)が可能かどうか
  • 賃貸人から転貸または使用に関する承諾を得ているか
  • 原契約・転貸契約・転貸承諾書など、関係書類が整っているか

これらの整理ができていない場合、販売場要件の確認段階で審査が止まることがあります。

また、委託側が店舗の施設や設備をすべて用意するケースでは、賃貸借契約を委託側名義で締結することもあります。その場合には、業務委託を行うことについて、事前に賃貸人の承諾を得ておくことが重要です。
後から問題になると、免許取得以前に、物件の使用自体が難しくなる可能性もあります。

このように、販売主体・業務委託スキームとあわせて、物件関係についても設計段階から検討しておくことが重要です。

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(補足)営業代行と「代理/媒介免許」

本当は「販売は委託側名義のままにするが、受託側に営業や取引成立の補助をしてもらいたい」と思われると思いますが、この場合、受託者が継続して、紹介・折衝・意思の伝達など”取引成立の補助行為”を行うのであれば、酒類販売の媒介業免許が必要になることがあります。

なお、酒類媒介業免許はかなり申請要件が高い免許のため、このスキームにしようとすると免許取得という高いハードルが立ちはだかってしまいます。そのため、なるべく受託側がお酒を仕入れて販売する「販売スキーム」に寄せていくことが現実的です。

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まとめ

このように、酒類販売に関する業務委託スキームは、契約書を締結する前段階でのスキーム整理が最も重要です。
免許申請前に、管轄の税務署や専門の行政書士に相談することで、スケジュール遅延やスキーム修正のリスクを大きく減らすことができます。

  • 酒類販売業務は、業務委託という形を取ること自体は可能だが、酒税法による免許制度の対象であり、一般の商品と同じ考え方はできないことに注意する
  • 酒類販売業免許を持つ事業者が、酒類の仕入れと売上を計上し、販売に従事するスタッフもその事業者に所属することが前提となる
  • 委託側が販売免許を取得したまま、販売業務やスタッフのみを外注するスキームは成立しない
  • 受託側が酒類販売業免許を取得し、売上を計上したうえで業務委託費を精算する形が、酒税法に適合しやすいスキームとなる。

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執筆者情報

大浦智幸 Tomoyuki Oura

アクセス行政書士法人 代表行政書士。2012年の開業以来、酒類販売・酒類製造に特化した支援を行い、延べ約1,800件の免許申請に係る。免許の取得率は100%。 前例の少ない複雑案件(通称“ゾンビ免許”承継)を手がけた経験から、「ゾンビ行政書士」の異名も持つ。