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酒類販売業免許の移転許可申請とは

酒類販売業免許を取得した後、販売場となっている事務所や店舗の移転を検討することもあるでしょう。

販売場を移転するためには、「移転許可申請」という手続きが必要です。この記事では、移転許可申請の概要、申請の流れ、販売中止期間を作らないための対処方法など、注意すべき点についてわかりやすく解説します。

移転許可申請はどうして必要?

酒類販売業免許は、酒類販売業を行う“場所”に対して付与されています。免許取得時には、その場所が酒類販売場として適切かどうかが審査されており、要件を満たした販売場であると認められて、初めて免許が付与される仕組みとなっています。

根拠法令等: 酒税法10条9号関係(場所的要件)

そのため、免許を取得した事務所や店舗が移転しても、免許が自動的に新しい場所に移ることはありません。移転先の事務所や店舗が要件を満たすかどうか改めて審査しなければ、販売場を移すことはできないのです。

販売場を移転し、移転先で酒類販売業を継続するために、販売場の移転許可申請は必須の手続きとなります。

移転許可申請をしないとどうなる?

移転の許可を得ないまま、移転先の事務所や店舗にて酒類販売業を行った場合は、無免許販売となり、懲役1年以下、50万円以下の罰金罰則の対象になります。

根拠法令等:酒税法第56条

移転許可申請の流れ

移転許可申請は、新規申請と同様、審査に原則2か月程度かかります。

無事に免許交付が決定すると、「移転許可通知書」という書類が交付されます。移転許可通知書を受け取るまでは移転先の販売場での販売は行えないため、余裕を持った準備が必要です。

提出先

  • 申請書の提出先:移転前の販売場を管轄する税務署
  • 申請書の宛先(申請書に記載する宛名):移転先の販売場を管轄する税務署

移転許可申請では、提出先と、申請書の宛先が異なる点に注意が必要です。移転先の税務署に提出しないように気を付けましょう。

審査期間

原則2か月

費用

移転許可申請には、登録免許税はかかりません。

必要書類

酒類販売業免許等申請書類一覧表|国税庁】

販売場の移転許可申請
申請書様式CC1-5126









1販売場の敷地の状況
2建物等の配置図
(建物の構造を示す図面)
3事業の概要
(販売設備状況書)



土地、建物、設備等が賃貸借の場合は賃貸借契約書等の写し、
その他契約書等の写し
土地及び建物の登記事項証明書
その他税務署長が必要と認めた書類
申請書等チェック表CC1-5104-2(7)

上記の他にも、次のような書類が追加で必要になる場合があります。税務署に求められたら対応しましょう。

  • 使用承諾書

移転先の販売場の賃貸借契約書の内容から、建物所有者がお酒の販売場として使用することを承諾しているということが十分に確認できない場合に、必要になることがあります。

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移転許可申請で販売中止期間を作りたくない場合の対処方法

移転前の事務所や店舗を退去する場合は、注意が必要です。

移転先の販売場で酒類販売業を始められるのは、移転の許可が下り、「移転許可通知書」を受け取ってからです。許可が下りるまでの審査期間中、酒類販売業免許はまだ移転前の販売場に紐づいています。

そのため、許可が下りる前に移転前の事務所や店舗を退去してしまうと、その時点で酒類販売業を行えなくなってしまいます。

販売中止期間を作らないようにするためには、許可が下りるまで既存の販売場を維持しておく必要があります。また、販売場を維持する家賃をなるべくかけたくない場合は、移転することが決まったらすぐに移転許可申請の準備を開始することが重要です。

「移転許可申請」と「条件緩和申請」、両方同時に申請できる?

販売場の移転と同時に、酒類販売業免許の種類を増やしたい(条件緩和したい)と希望されることもあるかと思います。しかし、“移転許可申請”と“条件緩和申請”は、同時に申請することはできません。

どちらの申請にも審査に原則2か月程度かかる為、優先度の高い申請から進めていく必要があります。

条件緩和を優先する場合

取引先から引き合いがあるなど、新しい商品や販売方法の導入を急いでいる場合には、先に条件緩和申請をおすすめします。

ただし、お酒の受発注の業務は「移転前の販売場」で行う必要があります。

移転を優先する場合

販売場となっている事務所や店舗の退去時期が差し迫っているなど、販売場としている場所自体を使用できなくなる場合には、先に移転許可申請をおすすめします。

ただし、新しい品目や販売方法が導入できるのは、移転許可の審査期間2か月、条件緩和の審査期間2か月を合わせ、概ね4か月後になります。

どうしても移転先の販売場で、新しい品目・販売方法で販売する必要がある場合は…

この場合は、移転許可申請と条件緩和申請をするのではなく、新規の酒類販売業免許を申請するという方法もあります。

ただし、新規申請の場合は、新しい販売場について登録免許税を納める必要があることと、既存の販売場の取消申請を行う必要があります。

どちらも優先したい場合は、新規申請を検討してみても良いでしょう。

「本店所在地」も移転する場合は、異動申告書の提出が必要

本店所在地で酒類販売業免許を取得しており、本店所在地の変更に伴って販売場が移転するケースでは、手続きに注意が必要です。

原則、本店所在地の変更については「異動申告(届出)」、販売場の移転については「移転許可申請」と、異なる二つの手続きが必要になります。

ただし、本店移転と販売場の移転が同時になる場合は、異動申告書の提出を省略できる場合があります。判断に迷う場合は、税務署の酒類指導官や専門の行政書士に相談すると安心です。

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まとめ

  • 「移転許可申請」は、販売場を移転し、移転先で酒類販売業を継続するために必須の手続き
  • 移転の許可を得ないまま、移転先の事務所や店舗にて酒類販売業を行うと罰則の対象になる
  • 審査に原則2か月程度かかるため、事業の空白期間を避けるためには、許可が下りるまで既存の販売場を維持しておく必要がある
  • 移転の予定が決まったらすぐに移転許可申請の準備を開始することが重要

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執筆者情報

大浦智幸 Tomoyuki Oura

アクセス行政書士法人 代表行政書士。2012年の開業以来、酒類販売・酒類製造に特化した支援を行い、延べ約1,800件の免許申請に係る。免許の取得率は100%。 前例の少ない複雑案件(通称“ゾンビ免許”承継)を手がけた経験から、「ゾンビ行政書士」の異名も持つ。