お客様紹介

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  • 製造免許

スポーツ業界からビール業界への挑戦。人を繋ぎ笑顔を広げ、横浜から世界を目指す。

10ヶ所以上ものブルワリーが集まり、クラフトビールの街として盛り上がりを見せている横浜。2024年9月には新たなブルワリー「Yellow Monkey Brewing」(以下YMB)が都筑区中川に誕生しました。

CEOを務めるのはスイス発スポーツブランド、Onの日本法人「オン・ジャパン」元代表の駒田博紀様。Onを日本で広めた立役者として知られています。

当インタビューでは、酒販・酒造の申請に特化したアクセス行政書士法人の代表、大浦がクライアントと対談。今回は、創業者&CEOの駒田博紀様と、ヘッドブルワーの齋藤健吾様に、YMB立ち上げの背景やクラフトビールへかける想い、酒販・酒造免許取得の経緯などをお聞きしました。

インタビュー中の画像 左から駒田氏、大浦、齊藤氏

都筑区中川に誕生した、横浜の新クラフトビールブランド

──まず、YMBを立ち上げるに至った背景を教えてください。

駒田様:オン・ジャパンでは、「Onというブランドを日本に根付かせること」を目標に仕事していて、それが僕の人生の目的であると思い込んでいました。

そんな中、2019年に日本全国8箇所を巡り、各地のランナーたちと交流するランニングイベントを行ったことで、発見がありました。僕はブランドの普及それ自体が目的だったのではなく、「人と人を繋いで、笑顔を広める」ということが目的だったのだと気づいたのです。

それが人生の目的であると意識し始める中、転機となる出会いがありました。2023年1月、知人の紹介で、健吾と飲みに行くことになったのです。当時、彼は横浜の「NUMBER NINE BREWERY」でヘッドブルワーとして働いていましたが、独立を考えているタイミングでした。

「どんなビールを作りたいの?」と尋ねたところ、「あっさりだけど芳醇といったビールを作りたいという夢はある。でも、ゴールは飲む人を笑顔にすること」という答えが返ってきたのです。

それを聞いて「自分と同じ人生の目的を持っている」とハッとさせられたと同時に、健吾の独立を支援したいと感じました。「人を笑顔にする」という目的を達成できるのであれば、手段がランニングシューズであってもビールであっても、僕にとっては些細な違いでした。

当初は投資という形で支援しようと思っていたのですが、2023年3月より東京から福岡までをOnのファンたちと走るイベントを行ったことで、その考えは変化していきました。

多くの笑顔を見る中で、健吾のビールを飲む人の喜ぶ顔を間近で見たくなったのです。ならば僕も参加するしかないと、YMBを彼と一緒に立ち上げようと決めました。2023年はOnが日本上陸してちょうど10年目。多くの人に愛されるブランドに育ち、“自らの役割を終えた”と確信できたのも大きな背景にあります。

──齋藤様はブルワーとしてどのようなキャリアを積まれてきたのですか?

齋藤様:ブルワーを志したのは、十数年前に勤めていた酒造でクラフトビールを飲んだことがはじまりです。そのおいしさに感動し、「自分もこんなビールを造りたい」と思いました。

まず千葉県のブルワリーで10年間基礎を学び、さらに見識を深めるべく、クラフトビール造りが盛んなニュージーランドに渡りました。

ニュージーランドでは語学学校に通いながら、修行させてくれるブルワリー探しからのスタートでした。履歴書を手に各地を回るなか、ようやく受け入れてもらえたのが「Fork & Brewer」というブルワリーです。

ビザの関係で正式には手伝ったという形でしたが、そこでの体験はかけがえのないものでした。幸運にも、醸造責任者のケリー・ライアンという人物が業界ではかなり有名人だった縁で、オーストラリアで学ぶ機会も得られました。

2カ国の修行で印象的だったのは、ブルワーが楽しみながらビールを造っていたことです。日本では何かと「失敗したらどうしよう」となりがちですが、彼らはとにかくポジティブでした。「外から日本を見る」という視点を持てたことからも、海外に渡った経験は価値があったと思います。

帰国後は「NUMBER NINE BREWERY」の立ち上げに携わり、醸造責任者として多彩なビール造りを経験できました。その一方で、僕ならではのビールを造りたいという想いも芽生え、独立を考えるようになりました。

醸造作業中の齋藤氏

──ブランド名の由来とロゴに秘められたストーリーを教えてください。

イエローモンキーブリューイングのロゴ

駒田様:正直なところ、このブランド名は、健吾がアーティストの THE YELLOW MONKEY さんのファンであることがキッカケでした(笑)。ですが、彼らの反骨心や新しいモノを作るといったメンタリティが、僕たちのありたい姿と一致していたことの方が、より深い理由でした。

ちなみに “YELLOW MONKEY”はかつてのアジア人への蔑称ですが、ゆくゆく世界に出たとき、逆にクールな印象を与えると考えました。やや自虐的なユーモアと反骨精神を持ちながらも、日本人として素晴らしいビールを造るという誇りを込めています。

ロゴは、僕たちの合言葉である「Be pirates. Be playful. 」をトップに置きました。これには、“常識や枠組みにはまりすぎず、遊び心を持とう”という想いを表現しています。また、横浜を拠点に世界に向かう意思を示すため、デザインには「錨」を用いました。

ブランドミッションをビール造りや空間で表現

──「ビールとスポーツを通じて 人と人を繋ぎ、笑顔を広める。」というブランドミッションに込められた想いを教えてください。

駒田様:ビールは人間関係を円滑にしてくれる潤滑油であると思っています。そんな飲み物を1番おいしく味わえるシーンの一つがスポーツの後と考えました。また僕がOn時代に、ビールとスポーツが人と人を繋ぎ、笑顔が広まっていくというシーンを幾度となく体感してきたことも根底にあります。

そんなブランドミッションを形として表すため、店内の奥にシャワールームを設置しました。YMBの近くにはランニングにピッタリな緑道があります。なので、走った後にシャワーを浴びて、スッキリした状態でビールを飲むという楽しみ方も可能なんです。

醸造作業をする齋藤氏と駒田氏

──YMBのクラフトビールの特徴を教えてください。

駒田様:人と人との繋がりや、笑顔を循環させることを大事にしています。たとえば、ビールの原料にはB級品の果物を使うこともあります。ビールとして世の中に届けることで、農家さんは破棄するはずだった果物を販売できて嬉しいし、僕たちはある程度安く仕入れることができて嬉しい。さらに飲み手はストーリーがわかるものを飲めて嬉しいといった具合に、笑顔の循環が生まれるはずです。

先日は、熱海市の農家さんと共同で、橙(ダイダイ)を使用したビールを開発しました。僕たちの「笑顔の循環を作りたい」と想いに共感してもらえたからこそ実現できたと思います。

齋藤様:ビール造りでは、基本は押さえつつも、自由な発想と遊び心を大切にしています。というのも、王道を追求してばかりでは可能性が完全に失われてしまうからです。

常識にこだわりすぎると可能性は0%ですが、そこから少し離れるだけで1%に上がります。人を笑顔にするビールとは、そういった中で生まれるものだと僕は思います。修行したニュージーランドのブルワリーでも、常に可能性を追い求めていましたね。

イエローモンキーブリューイングの缶ビールの画像

──店舗はどのような点にこだわりましたか?

駒田様:タップルームはお客さんの回遊性を高めるため、開放感を重視しました。如何様にでもレイアウトできるよう、テーブルや椅子も固定していません。裏を返せば、無駄なスペースが多いとも言えますが、この空間だからこそ、人と人が繋がるのだと思っています。実際に、お客さん同士が会話したり、仲良くなったりと、コミュニケーションが生まれているんですよ。

イエローモンキーブリューイングの外観

酒類製造免許は申請から約5か月半で取得

──2024年5月にタップルームで他社のビール販売を開始され、その約4ヶ月後にブルワリーでの醸造をスタートされています。その中で、酒販免許・酒造免許の申請をアクセス行政書士法人に依頼された理由を教えてください。

駒田様:当初、健吾から「お金もかかるので、免許取得は僕がやろうか?」と言ってもらえたのですが、僕としては、現場のプランニングに集中してもらいたいと考えました。そこで申請手続きはプロに任せることにし、私たちでリサーチする中、辿り着いたのがアクセス行政書士法人さんでした。

ご依頼した決め手は、ミーティングで感じた大浦さんの温かなお人柄です。僕のような業界のド素人にも丁寧に接してくださり、直感で「この人がいいな」と思いました。

ちなみに僕は直感を大事にしていて、今まで外れたことがないという自負があります。他の事務所を検討することもなかったです。

──依頼してよかった点や印象に残ったことを教えてください。

齋藤様:必要な書類について一つ一つ丁寧に説明してくださるなど、対応がきめ細かったのが印象的です。

また、僕たちが行う作業としては、フォーマットに記入するだけなのも良かったです。手間が大幅に省けたうえ、時間の短縮にもつながりました。

──YMB立ち上げに際し、苦労されたのはどんなことですか?

駒田様:なんと言っても物件選びですね。当初はみなとみらいに絞って探していたのですが、全然見つからず、横浜市全域に範囲を広げたんです。それでも、駅から遠すぎたり、環境が悪かったりと、どこもピンと来ませんでした。

そんな途方に暮れる中、突然ポッと出てきたのがこの物件でした。駅から徒歩約2分で、300平米弱。さらにブルワリーが作れる商業地区と、すべてが完璧でした。

イエローモンキーブリューイングの店内

──酒造免許取得を検討中の方へアドバイスをお願いします。

駒田様:自力で申請する場合、税務署とのやり取りが何往復も必要なうえ、取得まで1年半〜2年かかるという話も聞きます。また酒造免許は場所に紐づくため、取得まで時間がかかれば、数百万という賃料が垂れ流しになる可能性もあります。代行費用を惜しんで後々後悔するくらいなら、初めからプロに頼むのが絶対にいいと思いますね。

なお僕たちは、販売免許は約2か月、製造免許は約5か月半での取得となりました。時間をお金で買わせていただいたと言えます。

まずメンバー自身が笑顔になることが大切

──今後の短期的目標、長期的目標を教えてください。

齋藤様:短期的目標はクラフトビールイベント「ジャパンブルワーズカップ」で優勝すること、長期的目標は世界に出ていくことです。ゆくゆくは世界のトップランナーたちと一緒に走っていきたいですね。

駒田様:「目の前のたった一人を笑顔にする」ということを何千回、何万回と繰り返していくことが僕の目指すところです。つまり短期的目標と長期的目標はほとんど同じです。それには、メンバー自身が笑顔であることが大前提であり、それを実現させるのが僕の使命でもあると感じています。

また、新たなブルワリーの増設も視野に入れています。このブルワリーの年間生産量はどんなに頑張っても年間10万リットルが限界です。世界のトップランナーの一角に食い込むには、ここだけでは難しいのは明らか。3年後くらいには、次の段階に入りたいと考えています。

ただ繰り返しになりますが、僕たちが目指すのはあくまでもお客さんの笑顔。「おいしい!」と喜んでもらえることが1番ですね。

──貴重なお話をありがとうございました。